「おはようございます」
 落ち着いた声だったが、顔に笑みはなかった。

 嫌な予感がして、心がざわついてきた。

「残念ですが」

 それ以上聞く必要はなかった。
 毛の再生は認められなかったのだ。
 最上はがっくりと肩を落とした。
 それに呼応するように、「ダメだったか~」という日本語が耳に入ってきた。
 顔を上げると、落胆の表情を浮かべてうつむいている日本人研究員の姿が見えた。
 それを見ると、どうにもやり切れない思いに支配された。
 もう顔を上げることはできそうになかった。