最上の前には専門誌の特集ページで見たままの男性が座っていた。
 まだ20代と言ってもおかしくないほどの若々しい顔で笑みを湛えていた。

 最上は自己紹介をしたあと、スマホニュースで見た出資の件を切り出した。
 すると、表情が一変して苦々しいものに変わった。

「極東医療器から出資の打診があったのは事実です。しかし、まだ検討している段階です。なのに、あんな報道をされて、とても困惑しています」

 信じられないというふうに首を振った。

「誰かがリークしたのだと思います。報道機関を使って既成事実化を図ったのだと思います。秘密保持契約を結んでいるのに……」

 極東医療器への不信感を露わにした。

「まだ決まったわけではないのですね?」

 彼は頷いた。
 そして、
「この話は断ろうと思っています。秘密を守れないような会社は信用できませんから」
 と吐き捨てるように言った。

 安堵した最上は彼の目を見つめながら大事な用件を切り出した。

「弊社と提携していただけませんか?」

「えっ、提携ですか」

 彼の目に戸惑いの色が浮かんだように見えた。