成田に着いた最上は電車で東京駅へ移動し、そこでタクシーに乗り換え、難聴解消機器開発の本社がある御茶ノ水方面へ急がせた。

 アポイントは敢えて取らなかった。
 ニタス博士の秘書から何度も断られた経験があるので、直接門を叩くことを選択したのだ。
 一か八か当たって砕けろ! 
 という気持ちですぐに行動を起こしたのだ。
 
 御茶ノ水駅が近づいてくると、右手にひと際高いビルが見えてきた。
 かつて大手電機メーカーの本社があったビルだ。
 今は大手不動産会社が買収し、高層のビジネスビルに生まれ変わっている。
 その中に東京先端医療大学がある。
 しかし、そこに目指す会社はなかった。
 御茶ノ水駅の聖橋口(ひじりばしぐち)の一つ手前の信号を右折した所にあるのだ。
 そこには、築年数の古い雑居ビルが連なっていた。
 頭に描いていたイメージとの違いに困惑しながらも、タクシーを降りて、エレベーターで3階へ上がった。