翌日、スマホでニュースを見ていた最上は、そのスマホを落としそうになった。
 それほど衝撃を受けた見出しだった。

「難聴解消機器開発に極東医療器が出資か!」

 しまった! 

 思わず大きな声が出た。

 ヤバイ! 

 心臓を掻きむしりたいほどの焦燥感に襲われた。
 最上にとって有毛細胞の毛の再生薬と骨伝導補聴器は難聴解消に必須の両輪とも呼ぶべき重要なものだった。
 どちらも不可欠なピースだった。
 だから、このまま放っておくわけにはいかなかった。
 慌ててスマホに登録していたアイコンを押した。

 すぐに電話が繋がって、女性の声がした。
 しかし、それは録音された声だった。
 業務時間外を告げていた。

 時差を忘れていた。
 サマータイム期間中のワシントンD.C.と東京の時差は13時間だった。
 腕時計を見ると、午前10時を指していた。
 東京は23時。
 夜の11時だった。

 もっと早くこのニュースを見ていれば……、

 最上は唇を噛んだが、後の祭だった。
 いつもはスマホのニュースを小まめにチェックしているのだが、昨日は発毛剤誘導体の残念な途中経過に落ち込み、やけ酒を呷って気を失うように眠ってしまったのだ。

 後悔先に立たず! 

 さっきより、もっと強く唇を噛んだ。
 しかし、手をこまねいているわけにはいかなかった。
 真偽のほどを確かめなければならないのだ。
 すぐさま日本へのチケットを取って、飛行機に飛び乗った。