「ハッキリ言って」

 麗華と令が唾を飲み込んだ。
 ゴクンという音が聞こえてきそうなほど、大きく飲み込んだ。

 すると轟が顔を上げ、
「ハッキリ言って、最高よ!」
 と満面に笑みを浮かべた。
 その瞬間、一転して2人の顔がパッと明るくなった。

「契約させてもらうわ」

 それは2人にとって夢のような言葉だった。
 そのせいか麗華は泣き出しそうな顔になったし、令も口に手を当てていた。
 それでもなんとか表情を戻して轟に向き合い、「REIZというバンド名を考えています」と麗華が声を絞り出した。
 すると令が「デビュー曲は『サンライズ』にしたいのですが」とデモCDのクレジットを指差した。
 2人は轟の目を食い入るように見つめていた。

 しかし轟はさり気なく目を逸らし、意味ありげにこちらを見た。

「企画部長は須尚さん。わたしじゃないわ。バンド名もデビュー曲も須尚さんの承認を得てください」

 そう言い残して席を立つと、後姿を見送った麗華はすぐさまこちらに向き直った。

「お父さん、じゃなかった、須尚部長、REIZとサンライズでいかがでしょうか」

 グッと身を乗り出すと、横に座る礼も同じように顔を近づけてきた。

「んん」

 思わせ振りに喉を鳴らして顔を交互に見た。
そして、自分の中で最高に威厳がありそうな低くて渋い声を出した。

「よかろう」