しばらくして、背の高い上品な男性を伴って戻ってきた。
あっ!
その顔に見覚えがあった。
名乗ろうとすると、彼が先に口を開いた。
「お久しぶりです、MOGAMIさん」
当時本店でアシスタントマネジャーをしていた彼は忘れていなかった。
今はこの店の責任者をしているという。
「どうぞ、存分にお弾きになってください」
ピアノの方へ手を動かしたので、笑みを返してピアノへ向かい、チェアに座って鍵盤に手を置いて静かに目を閉じた。
すると、笑美の顔が浮かんできた。
そして、初めて会った時に彼女が弾いていた曲が聞こえてきた。
ビル・エヴァンスの名曲『ワルツ・フォー・デビー』だった。
鍵盤に置いた指が自らの意志で動いてメロディーを弾き始めた。
特徴的なイントロに耳をそばだてているのだろうか、客席の話し声が止んだ。
と同時に視線を感じ、近くの席の女性の囁きが聞こえてきた。
「なんて優しくて穏やかな音色……」
チラッと見ると、その人は目を瞑っていた。
その表情は、まるでメロディーに抱かれているように見えた。
弾きながら幸せな気分になった。
あっ!
その顔に見覚えがあった。
名乗ろうとすると、彼が先に口を開いた。
「お久しぶりです、MOGAMIさん」
当時本店でアシスタントマネジャーをしていた彼は忘れていなかった。
今はこの店の責任者をしているという。
「どうぞ、存分にお弾きになってください」
ピアノの方へ手を動かしたので、笑みを返してピアノへ向かい、チェアに座って鍵盤に手を置いて静かに目を閉じた。
すると、笑美の顔が浮かんできた。
そして、初めて会った時に彼女が弾いていた曲が聞こえてきた。
ビル・エヴァンスの名曲『ワルツ・フォー・デビー』だった。
鍵盤に置いた指が自らの意志で動いてメロディーを弾き始めた。
特徴的なイントロに耳をそばだてているのだろうか、客席の話し声が止んだ。
と同時に視線を感じ、近くの席の女性の囁きが聞こえてきた。
「なんて優しくて穏やかな音色……」
チラッと見ると、その人は目を瞑っていた。
その表情は、まるでメロディーに抱かれているように見えた。
弾きながら幸せな気分になった。