店を出ると、何か変だった。

 あれっ? 

 耳の奥でキーンという音が鳴っていた。

 ヤバイ! 

 大音量に晒し過ぎた。
 耳の状態が心配になった。
 すると、スナッチのことを思い出した。
 彼の耳鳴りの原因は大音量だった。

 ヤバイ、ヤバイ! 

 静かなところで耳を休ませなくてはと思い、両手で耳を押さえて外からの音を遮断した。
 そして静かに休める店を探した。
 
 しばらく歩くと、落ち着いた静かな通りにある、ひっそりと佇む店のネオンサインに目が留まった。

 あっ、この店名は、

 目が釘づけになった。

『フィール・ソー・グッド』

 大学院時代にピアノを弾いた店と同じ名前だった。