ステーキ店を出てしばらく歩くと、若者がたむろする店が目に入った。
『ハードロック・クラブ』
 激しい音楽を聴きながら踊る店のようだ。
 ハードロックには興味がなかったが、今夜は身を委ねたい気分だった。

 店内に入ると、耳をつんざく程の大音量に襲われた。
 その曲に合わせて若い男女が体を激しく揺らしていた。
 その姿に見入っていると、長髪のヴォーカルがサビを歌い始めた。

 あっ!

 思わず声が出た。
 よく知っている曲だった。
 ディープパープルの『ハイウェイスター』
 スナッチが大好きな曲で、彼の部屋でよく聴いたし、大学祭で彼が速弾きをしてカッコよく決めたのも鮮明に覚えていた。

 スナッチ~! 

 大声で叫ばずにはいられなかった。
 体も勝手に動き出した。
 わけもわからず無茶苦茶に踊った。
 そして、そのバンドの演奏が終わるまで踊り続けて店を出た。