それまでは音大にしようか芸能大にしようか悩んでいたのだが、芸能大一本にする決心がついたのだ。
 そのことを知らない父親はさっき面食らっていたが、若い頃のバンド活動が娘に影響を与えていると知ったらさぞ驚くだろうと考えると、また可笑しくなった。
 すると、あの時の木暮戸令の歌声が蘇ってきた。
 そして、『ロンリー・ローラ』のエンディングを飾るツインリードギターを弾く父親の姿が見えたような気がした。

 わたしはスナッチの娘。

 心の中で呟いた。
 すると、父親の会社からデビューする姿がおぼろげに浮かんできた。

「わたしはスナッチの娘」

 今度は声に出して言ってみた。
 すると、満員の観客の前でピアノを弾いて歌っている姿がはっきりと見えた。
 それだけでなく、隣に立って演奏している人物の姿も浮かび上がってきた。