須尚麗華 

 自分の部屋に戻った麗華は高校2年のあの日のことを思い出していた。
 冬休み前に男女計6人でカラオケに行った時のことだ。
 その頃流行っていたのはリバイバルソングだった。
 特に、70年代や80年代の曲に人気があった。
 人気の理由は、覚えやすさだった。
 最近の曲は複雑で覚えにくいし、カラオケで歌うのに苦労するという同級生が多かった。
 それに対して、親が若かった頃のヒット曲はシンプルだから、とても覚えやすく、何回か聞いたら誰でも歌えるようになる。
 そこが魅力で支持を広げていた。

 女の子たちは、いつものようにピンクレディーやキャンディーズ、松田聖子や中森明菜などの曲を歌い、男の子たちは、沢田研二やチェッカーズ、安全地帯や少年隊などの曲を歌った。

 しばらくして誰かが、「ちょっと飽きたな。いつもと違う曲歌いたいな」と言った時、長髪の男子が「いい曲知ってるよ」と、リモコンで予約番号を押した。
 しかし、自分も含めてみんなは次の曲を探すために歌本をめくっていたので、彼がどんな曲を入力したのか見ていなかった。