「芸能大には作詞作曲専科があって、ジャズ、ロック、ポップスの作詞作曲を学べるようになっているの。わたしは世界で通用する作詞作曲家になりたい。そして、それを表現するミュージシャンになりたいの」

 確かに、芸能大の作詞作曲専科では授業はすべて英語で行われている。
 それは世界を目指すために必須だと考えられているからで、パンフレットにも『世界で活躍することを夢見る生徒に広く門戸を開いています』と書いてあるし、願書はすべて英語で書くことが決められている。
 しかし、だからといって音大より優れているとは限らない。
 まだまだ歴史は浅く、卒業後に活躍しているミュージシャンもそれほど多くない。
 そのことを指摘すると、「そこがいいのよ。これから自分たちで歴史を作っていけるところがいいの」とムキになった。
 一歩も引くつもりはないようだった。
 まあ、若い時にはこうと決めたら他のことが目に入らなくなるのはよくあることなので、この場はいったん聞き置くことにして話題を変えた。

「ところで、いつからそんなことを」

 すると麗華は「う~ん、そうね、多分、あの時からかな」と意味不明なことを言った。
 そして、上目遣いにちらっとこっちを見た。