アメリカは凄い! 

 改めて、その底力を痛感した。
 と共に、焦りにも似た感情に襲われた。
 狙いを定めている癌と難治性疾患へのアプローチで彼らは遥か先を行っているのだ。
 それだけではなく、確実に成果を出し始めていた。

 この出遅れを取り戻せるのだろうか? 
 追い付き追い越せる日が来るのだろうか? 
 と考える度に弱気になった。

 彼我(ひが)の差を冷静に判断すればするほど絶望的になってくるのだ。
 ただでさえ成功確率が極めて低いチャレンジである上に、資金力・人財力の違いが明らかだった。
 最上製薬は成長軌道に乗っているとはいえ、日本の中堅企業に過ぎない。
 世界から見ればちっぽけな存在でしかなかった。

 これ以上続けるのは無謀かもしれない……、

 弱気の虫が心を蝕み始めていた。
 身の丈に合った決断をしなければならない、落ち着いてじっくり考えなければならない、と思うと、じっとしていられなくなった。
 すぐに予約をして、アメリカから逃げるように飛行機に飛び乗った。