その通りだった。
 なんて情けない男かと思った。
 すると、バカバカしくなった。
 犯人のことはどうでもよくなった。
 再発防止の方が重要だと切り替えた。

「爆音が出ない設定にした方がいいんじゃないでしょうか」

 彼はすぐに大きく頷いた。

「警察からも防止策を言い渡されました。試聴機のボリュームを聴覚に影響のないレベルに抑えるようにと」

 会社に報告して、すぐに実行するという。

 それで安心したが、再発防止のための見回り強化を継続するようにお願いして店を出た。

 ふと空を見上げるとどんよりとした雲が垂れ込めていて、それは心の中を反映しているように思えた。
 大事なことは何も解決していないのだ。
 すっきりするわけがなかった。
 犯人探しの日々は終わったが、耳の奥で鳴り続ける不快な音はその存在感を一段と強めていた。