50分ほど経った頃、女性スタッフに誘導されるようにして警察官が2人、扉の中に入っていった。
 警察官を呼んだということは、店の人は単なる悪戯で済まそうとはしていないようだった。
 当然だ。
 人の聴覚を痛めつけて喜んでいる奴なのだ。
 注意しただけで許すなんてとんでもない。
 懲らしめられて当然なのだ。
 法の裁きを受けて当然なのだ。
 そう思っていたら、そいつの両脇を抱えるようにして警察官が出てきた。
 そして、そいつを連行していった。

 その姿を見送っていた大柄な店員に声をかけて、被害者の一人であると告げた。
 すると、加害者でもないのに謝罪してくれて、事細かに説明してくれた。

 最近試聴機に関する苦情が増えており、怪しい人間を見かけたらマークするようにと店長から指示が出ていた。
 だからいつものように店内を見まわっているとハードロックコーナーに差し掛かった時、試聴機のボリュームツマミを最大にしている年配者を見つけたので現行犯として捕まえた、ということだった。

「まさか父親ほどの年齢の人が犯人だったとは……」

 店員は落胆したような表情になって口をつぐんだが、首を振ったあと、犯人を追及した概要を話してくれた。