犯人探しを始めて3週間が経とうとしていた時だった、挙動が普通ではない男を見つけた。

 なんか怪しい……、

 その男は周りを見回してキョロキョロしていた。
 誰もいないことを確認しているのだろう。
 それが終わると安心したような表情で装着していたヘッドフォンを元に戻し、ツマミを回した。

 そいつが去ってから急いでその試聴機の前に行った。
 思った通りだった。
 ボリュームが最大になっていた。
 こいつに違いないと確信してその男を追いかけた。
 CD棚を縫うように足早に歩いていた男を必死になって追いかけた。
 しかし、突然見失った。

 えっ? 
 どこへ行った? 
 どこだ? 

 動揺して焦ったが、
〈落ち着け、落ち着くんだ!〉と自らを叱り飛ばし、
〈白髪の短髪だから見失うわけがない〉と言い聞かせた。

 冷静さを取り戻すと、被害に遭ったハードロックコーナーが脳裏に浮かんだ。
 間違いないと思い、はやる気持ちを抑えて音を立てずに近づいた。