須尚正 

「やったね」

「これで、長崎に来る観光客が増えたらいいな」

 美麗と手を取り合って喜んだ。
『長崎くんち』が1979年2月3日に国の重要無形民俗文化財に指定されたのだ。
 そして、その秋、念願が、それも2つ共叶うという幸運に恵まれた。

 一つは、2年続けて諏訪神社の桟敷席(さじきせき)で美麗と見ることができたこと。
 父親が長崎くんちの世話役をしている関係で、今年も貴重なチケットを入手することができたのだ。
 もう一つは、なんと、あの『コッコデショ』を見る機会に恵まれたことだ。

 コッコデショ。
 それは、筆舌に尽くし難い歓喜の奉納踊り。
 そして、誰もが熱狂し鳥肌が立つ感動の舞。
 本来なら7年に一度しか見ることができないコッコデショが、前回から4年後の今年、特別に披露されるのだ。
 長崎くんちが国の重要無形民俗文化財に指定されたことを祝うための特別な企画として。