悪い予感は……残念ながら的中してしまった。

 轟から聞いたところによると、タッキーとベスの不満は限界に達し、その怒りは企画部長や轟にとどまらずキーボーへと向かったらしい。
 (いわ)れのない非難を受けるキーボーも態度を硬化させたそうだ。
 両者の溝は埋めようのない深さになり、最早修復は不可能な状態になってしまったのだという。

 あれほど仲が良かった3人なのに……、

 犬猿の状態に陥って、顔も見たくない程の嫌悪感を抱くようになった状況を想像した。

 なんでこんなことになったんだ……、

 関係者の誰もが望まない最悪の結果をもたらしてしまった事態に頭を抱えた。

 バンドが空中分解してしまったなんて……、

 まだ信じられなかった。
 いや、信じたくなかった。
 しかし、事実を変えることはできなかった。

 順調に成功への階段を上っていたビフォー&アフターの活動はエレガントミュージック社の企画部長に翻弄(ほんろう)され、花がしおれるように散っていった。
 今まさに桜が開花しようとしていた時に。