部長がミーティングルームから出て行ったあと、部屋は険悪なムードに包まれた。

「やってられないよ」

 憤慨するベスにタッキーが同調した。「
 小学生でも叩けるような太鼓を」と言った途端、スティックを部屋の壁に投げつけた。
 キーボーがそのスティックを拾い上げて「もう1曲だけ辛抱してやってみようよ」となだめるように言ったが、返ってきたのは溜まりに溜まったベスとタッキーの不満だった。

「お前はいいよな。キャーキャー言われてさ」

「そうだよ。テレビでアップにされるのはお前の顔だけじゃないか。俺たちはまるでバックバンドみたいで、やってられないよ」

 2人は憤まんやるかたないというような表情でキーボーを睨んだ。

「そんなこと言うなよ」

 さすがのキーボーも気色ばんだ。

「ちょっと、落ち着いて」

 轟が割って入ろうとしたが、2対1の睨み合いを終わらせることはできなかった。

「とにかく、やってられない!」

 ベスがドアを乱暴に開けて出て行った。

「冗談じゃないよ」

 ドアが壊れるかと思うくらい力いっぱい閉めてタッキーが出て行った。