ビフォー&アフター 
 
 思いもかけぬ大ヒットになった。
『言葉はいらない』以上のヒットになったのだ。
 切なく歌うキーボーの姿に若い女性ファンが心を震わせ、酔いしれ、ファンレターが段ボール箱で毎日届くようになった。
 しかし、キーボーの人気上昇の陰でタッキーとベスが腐っていた。
 単調なリズム、単調なベースラインにウンザリしていたのだ。
 生気のない顔で演奏するタッキーとベスの姿がテレビに映し出されていた。
          
「4曲目は元の曲調に戻させてください」

 タッキーとベスが必死になって訴えた。

「ダメだ。次も『涙のベル』路線で行く」

 企画部長は聞く耳を持っていなかった。

「これだけの大ヒットになったんだぞ。ファンが求めている証拠じゃないか。元の曲調に戻すなんて、とんでもない」

 そして轟に向かって、
「スナッチにもっと切ないバラードを作るよう依頼してくれ」と命令した。