『ロンリー・ローラ』のヒットは九州から関西へ、そして関東へと広がっていき、遂にテレビのベストテン番組からお呼びがかかるようになった。
 すると初回だけでいいからと出演を依頼されたが、迷うことなく断った。
 プロのミュージシャンになる気はまったくなかったからだ。
 それでも彼らが出演する番組は可能な限り見ていた。
 しかし、ツアー・ギタリストがギターフレーズをコピーして演奏する姿を見ると、なんかとても変な気分になった。
 
 デビュー曲のヒットは別の面で大きな変化をもたらした。
 印税だ。
 作詞と作曲、そして、ギターの演奏に関する印税だった。
 信じられない額がスナッチ名義の銀行口座に振り込まれた。
 知らない人の通帳を見るような、不思議な感じだった。
 大金が貯まっていったが、印税には一切手をつけなかった。
 急に金持ちになると人格が変わるという話を聞いたことがあるからだ。
 そうはなりたくなかった。
 だから、派手な生活を戒めた。