「入会しに来たの?」

 スキンヘッドの低い声だった。

「ええ、ちょっと興味があって」

「作詞作曲の経験は?」

「ないんですけど」

「そう」

 視線を外された。
 そして、長髪2人に向かって、どうする? というように目を向けた。
 すると長髪たちは、任せる、というように無言で頷いた。
 スキンヘッドの視線がこちらに戻ってきた。

「楽器は何やってんの?」

「ギターです」

「おっ、エレキ? アコギ?」

「アコ……」

「アコースティックギターのこと」

 茶髪長髪が笑いながら言った。
 ハスキーな声だった。

「エレキです」

「ジャンルは?」

「ハードロックです」

「ハードロックか~」

 3人が目を合わせて、肩をすぼめた。

「ハードロック、歌える?」

 黒髪長髪が甘い声を発した。

「いえ、歌えません。ギターだけです」

「だよね」

 また3人が目を合わせて、今度は笑った。

「日本人には無理なんだよ、ハードロックのヴォーカルは」

「そうそう。声帯が違うんだよ、絶対」

「そうだよな、それにリズム感も違うし」

 興味が失せた3人は、まるで誰もいないかのように自分たちの世界に戻っていった。
 机を叩く音と楽器の生音と小声のハミングが再び始まった。

「ギターなら自信があります」

 声を張り上げると、3人の視線が戻ってきた。
 すると、茶髪長髪が「エアギターやってみて」と言った。