翌日は快晴だった。
 雲一つない真っ青な空が広がり、正にイベント日和という最高の天気だった。

 会場の稲佐山公園に設けられた特設ステージではビフォー&アフターが最終の音響チェックを行っていた。
 もちろん、ギターを弾いているのは自分ではない。
 ツアーに同行しているギタリストだった。

「須尚さん、スナッチはどこにいるの?」

 轟が慌てふためいていた。

「もうすぐ始まるのに、どこにもいないの」

 しきりに時計を気にした。

「探してきます」

 あたりをキョロキョロ見回しながら、スナッチを探す振りをして走った。
 そして、彼女から見えないところまで行くと、急いで仮設の楽屋へ走り込んだ。

 中には誰もいなかった。
 カーテンで仕切られた小さなスペースで背広を脱ぎ、急いでステージ衣装に着替えた。
 そして、サングラスをかけ、髪を前に下ろした。

 今から僕はスナッチだ。ビフォー&アフターのスナッチだ! 

 自らに言い聞かせて両手で頬を叩いた。
 その時だった。

「須尚さん、スナッチいた?」

 轟が楽屋へ入ってきた。
 その瞬間、あっ、というような真ん丸な目になって、スナッチに変身した自分を指差した。

「どこにいたの? みんなで探してたのよ。でも、良かった」

 安心したような表情になって肩を掴まれた。

「ところで、須尚さんを見なかった?」

 無言で首を横に振った。
 声を出すとバレると思ったからだ。

「おかしいわね……」

 彼女が首を傾げた。