2日後、
 沈んだ声が受話器から聞こえてきた。

「企画部長に相談したんだけど、ちょっと難しいかもしれない、という返事だったの。ごめんね。なんとかしてあげたいのだけど……」

「ダメですか……」

 落ち込んだ。

「まだ完全にダメって決まったわけではないけど、部長は営業部マターに首を突っ込みたくないらしいの。2人の仲は良くないからね」

「そうなんですか……」

「そうなの。色々あるのよ。こんな小さな会社で、営業だ、企画だって言ってる場合じゃないのにね」

 皮肉そうなため息が聞こえてきたが、見捨てられたわけではなかった。

「もう少し時間を頂戴。他に方法がないか考えてみるから」

「なんとかよろしくお願いします」

 すがる人が彼女しかいないので、受話器を持ったまま頭を下げた。

 会社が対応してくれる可能性はほとんどないと気落ちしたが、返事を待つ間もレコード店への営業に手は抜かなかった。
 放送局のオンエアがなくてもなんとか売れる体制を作らなければならないのだ。
 重点先へのプロモーション提案を何度も繰り返した。

 有難いことにレコード店の反応は上々だった。
 重点的に訪問している店は全店でポスターを貼ってくれたし、新譜を1店舗3枚ずつ発注してくれた。
 その上、店頭で『ロンリー・ローラ』のプロモーション用レコードを一日に何度もかけてくれた。
 準備は上々だ。
 あとは、放送局だけ。
 放送局さえ攻略できれば最高のスタートを切ることができる。
 期待薄ではあったが、轟からの連絡を一日千秋の思いで待ち続けた。