「誕生日おめでとう」

 門の近くで談笑していた彼女に花束を渡した。
 紫色の花が可愛い蓮華草(れんげそう)だった。
 3月3日の誕生花。
 花言葉は『わたしの幸せ』

「わ~、ありがとう!」

 歓喜の声を上げた彼女は飛びつきそうになったが、周りに人がいることに気づいたようで、すんでのところでその行動を止めた。
 そして、何事もなかったように花に顔を埋めて香りに触れた。

 広い庭には多くの人が集まっていた。
 上品そうな服を着た人たちばかりだった。
 自分はネイビーの背広にピンクのネクタイを締めてお洒落をしてきたつもりだったが、この人たちはレベルが違っていた。
 生地がまったく違うのだ。
 光沢を放っていて、シルク生地に違いなかった。
 1着20万円以上はする背広だ。
 対して自分のは1着3万8千円。
 横に並ぶのが恥ずかしいくらい違いが際立っていた。