「……お母さん……私今日ね……綺麗な人に会ったよ……」



帰宅後。

机の上にお母さんの写真を立てかけて、限界を迎える寸前の(まぶた)を必死に開けてお母さんに今日の出来事を話す。


1つ1つの単語を繋げて話すが、睡魔に襲われた途端、プツンと糸が切れたように夢の中へと落ちていった。




〈可愛い可愛い私の未。
この大空のように広い心で、誰にでも好かれる優しい人になって…。

愛してるわ〉



お母さん……ごめんね。

人に優しくても、お母さんの思い描く“誰にでも好かれる”女の子にはなれないみたい。


夢の中でも蘇るお母さんとの記憶。

お母さんが今でも生きていたら、人生何か変わってたのかな……。




〈あんたの顔なんか二度と見たくない!!〉



今のは……誰…?

お母さんと交わした会話には無い言葉。

私の知らない記憶。


女の人の声だった。

その声はどことなく震えて怯えた声。


その一言で身体が驚いたのか、一瞬にして目が覚めた。