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翌朝。



「おはよう、お母さん」


今日は土曜日、いつもと同様にお母さんに挨拶をする。


今日の朝ご飯は鮭の塩焼き、なめこの味噌汁、白米とサラダ。


料理好きだったお母さん。

お母さんが残してくれたレシピノートに書いてある料理を元にして作った今日の献立。


ご飯を食べ終えたら、洗濯物を回している間に食器を洗ったり部屋の掃除をする。

休日でのバイトは11時からだから少しゆっくりと準備が出来る。


化粧もオシャレな洋服も、可愛いものにも興味がない。


基本的に黒か灰色の色物しか選ばない。

今日もポケットとフード付きの灰色のパーカーに黒のズボンというシンプルな服装。


鞄はお母さんが愛用していた茶色のがま口付きのショルダーバッグを使っている。



「行ってきます」



ある程度の家事を終え、お母さんに挨拶をして家を出る。



「……ひつじ雲…」



ふと空を見上げると、青空を背景に無数の白くて丸い小さな雲が視界いっぱいに広がっている。



〈おかあさん!ちいさなくもがいっぱいある!!〉

〈ほんとね!あれはね、ひつじ雲っていうのよ〉

〈ひつじとおなじなまえ?〉

〈ふふっ、そうよ。未おいで〉


両手を広げるお母さんの傍に寄り添う私。


〈お母さんね、空が好きなの。
雲1つ無い真っ青な空も好きだけど、そんな真っ青な空の中で白い雲が色んな形をする空が好きなの〉


空を眺めながら微笑みかけるお母さん。


〈雲ってね、毎日全く同じ形をした雲は発生しないの。1日1日色んな表情変えて現れる。
その中でも今日みたいに小さな雲がいっぱい出来る“ひつじ雲”と細長い雲が沢山ある“うね雲”っていう2つの雲がお母さん大好きなんだ〉

〈どうして?〉

〈ん〜、ただ単純に可愛いからかな?お母さん子供が出来た時は必ず大好きな雲の名前を生まれてくる子に付けようと思ったの。
可愛い可愛い私の未……〉