「佐野さん、そんなに頼み込まなくてもい――」


「だってお姉ちゃん今までに1人も彼氏いないし、そもそも誰かに恋したことってないでしょ?」



未来屋くんの声すら聞こえてない。


確かにあいつのせいもあって今まで誰かに恋をするということへの諦めはあった。彼氏もましてや好きな人さえもできたことは無い。



恋することに憧れがないと言ったら嘘になるけど……。



「だからっていきなり初対面の子と恋愛って」



「まずは付き合ってみないと分からないって!未来屋くん基本人に興味が無くて冷たい人だけど、多分根はめっちゃ良い人だから!お試しということで!ね?」



「佐野さん、それ本人が居る前で言うことじゃないよ」


ごもっともで。


ジッーー



お願い!という言葉が聞こえてきそうなほどの眼差しを向けられる。



どうしても私に恋愛をして欲しいらしい。




ジッーー




「でも私みたいな凡人が恋愛って……」