花火師になって初めての夏祭り会場で、私は同窓生と再会した。ずっと好きだった男の子だ。嬉しかった。ずっと逢いたかったから。
 でも、その隣にいる女の子が気になった。誰なんだろう? 凄く可愛いけど……もしかして、恋人? デートでお祭りに来たの?
 それが気になって、彼との会話はぎこちない。
 そんな私は、彼は誤解した。
「ずいぶん緊張しているみたいだね、花火職人になって初めての夏祭りだからかなあ。でも、君なら大丈夫。応援してるよ」
 そう言って私に微笑む彼に、私は言いたかった。違う、そうじゃない、誰? その子、誰なの?
「お兄ちゃん、お仕事の邪魔にならないようにしなきゃダメじゃない」
 彼の隣にいる女の子が、そう言って彼の袖を引っ張った。え、お兄ちゃん?
「その子、妹さん?」
「ああ、そうなんだ」
「兄がいつもお世話になってまーす!」
 なんだ、そうだったんだ……安心した。
「忙しそうだから、もう行くね。頑張ってね!」
 彼は、そう言って立ち去った。妹さんは、私にペコリと頭を下げてから、彼の後を追いかけた。
 私はホッとした。安心したら元気が出てきた。力が湧いてくる。
「よし、頑張るぞ!」
 彼と妹さんに奇麗な花火を見せるんだ!
 私は花火の導火線に火を点けた。