「わたしたち、いつもきつく言い聞かせられているんです。海堂学園には近づかないようにと。それに、男性をこわがっている生徒も多いので」

「あー、まぁ、分からんでもないけど。俺たちみたいなのとお嬢様とは、住む世界が違いすぎるからな」

違う世界。それはつまり、海堂学園は、小説の世界のようなところだということ?

「あんたは、こわくないの? 俺のこと」

「は、はい……。近くで見たのは初めてで、こわいというよりドキドキしています」

「ドキドキ? なにそれ、おもしろいね」

おもしろいこと、言ったかな?

「きつく言われてるんなら、俺とこうやってふたりで話してるのがバレたら、あんたやばいんじゃないの」

「は、はい。でも、この裏庭にはわたし以外誰も来ないので。本当は、近づくことを禁止されてるんです」

「へぇ? わるい子なんだね」

彼の唇が、ニヤリと動く。

「じゃあさ、俺がここに入ったこと、ひみつにできるよね?」

「っ!!」

急に顔が近づくから、びっくりしてしまった。
さっきから、わたしになにが起こっているの?

「ついでに、こうしてたまにかくまってよ。立ち入り禁止の場所にいること、言いふらされたくないだろ?」

「えっ!? そ、そんな」