「あのハゲ、しつこくてさぁ」

それは、ずっと外で叫んでいた人のことでしょうか。

「えっと、髪の毛が無い方に追われていたのですか?」

「ははっ、あんた、割と言うね。そー。あれ、うちの担任。すぐ怒鳴ってくんだよね。こっち側までは、さすがに追っかけて来ないと思ってさ」

怒りやすい先生と、悪さをして追いかけられる男子!
恋愛小説で見たことがあります……!
実在するなんて。

「この塀を越えられる方がいるなんて、すごいです。運動神経がいいんですね」

「あー、ここ、結構高いもんな」

「はい。学校同士がいちばん近い場所なので、どちらも行き来出来ないようにしていると聞きました。越えた方を見るのは、初めてです」

海堂学園の生徒さんを、こんなに近くで見るのも、初めて。

背が高い。
手が大きい。
声が低い。
顔も……かっこいい。

「あんた、雪平の生徒なのに、変わった反応すんね」

「変わっていると、いいますと?」

「だっていつも、見かけるだけで逃げるだろ。ゴミを見るような目で見てきたりさ。昨日なんか、うちのクラスのやつ、車の外から試しに手ぇ振ったら、化け物でも見るような顔されたって言ってたし」

百合さんのことでしょうか。