「うう、悔しいです。壱さん、お見事です」

「武士みたいな言い方してるな」

それに、ちょっと……、いいえ、だいぶ楽しかった。

「おもしろいですね。他にもあるんですか?」

「あるよ。あとで教えてやる」

「本当ですか? 楽しみです」

「聖良の負けだから、まずはカフェに連行な。行くぞ」

手を引かれて、カフェの入り口を通る。
わたしが負けたら壱さんのおごりになってしまうのに、わざとわたしが負けるように仕向けて。
行動が、スマートすぎる。
壱さんは、こんなことは慣れているからなんでしょうか。

それは、他の女の子と……?

今日が嬉しくて、楽しい。
なのに、どうして?
少しだけ、呼吸がしにくいのは。