私立雪平(ゆきひら)女学院、高等部。
由緒正しい家柄のお嬢様が通う学校には、ひとつ、決まりごとがあります。

高い塀を隔てて隣接している、私立海堂(かいどう)学園。

『隣の男子校の生徒に、関わってはいけない』。

初等部からずっと、同世代の男子から隔離された環境で、わたしたちは大事に大事に育てられてきました。

身近な男性はというと、父、屋敷の執事長、運転手。これくらい。

なので、わたしにとって、自分と同じくらいの男性は、遠くから見ているだけの存在。
物語の中だけの人物。
ほとんどファンタジー。

結婚相手は、いつか親が用意するもの。
それまでは、異性には関わらない。
それが、普通のことなのだと思っていた。

──あの時までは。