「壱さんが悪い人なら、本当はわたし、壱さんをここから追い出さなくちゃいけないと思うんです」

「もう遅いよ。俺を受け入れた、聖良も悪い。だから、共犯な」

どうしよう。
いけないことだと分かっているのに、この状況に、気持ちが高揚してしまっている。

だってこんなの、わたしは物語の中の誰かを見ることしかしてこなかったのに。
共学って、いつもこんなに男子が近いものなのでしょうか。

「ここ、気持ちいいな」

壱さんが目を閉じる。

「はい。その塀が日陰になっていて、天気のいい日は特に気持ちいいんですよ。お気に入りの場所なんです」

風が吹いて、サラサラと葉っぱが揺れる音が聞こえる。

「壱さんにも、気に入って頂けて嬉しいです」