本当はもう少し風に当たっていたかったけれど、直樹からそう言われると断れない。
窓に手を伸ばそうとした時、直樹が同じように私の後方から腕を伸ばして窓を締めた。

まるで抱きしめられるような距離感になって呼吸が止まる。
直樹のぬくもりがすぐ近くにあって、振り向けばその胸に顔をうずめることができる距離にある。

だけど私はなにもできないまま、緊張で硬直していた。
そして窓を閉め終わった直樹がニッコリと微笑んで「椎名は窓を開けるのが好きじゃないんだ」と、言ったのだった。