ホッと胸をなでおろしたとき後方に人の気配を感じて振り向いた。
そこに立っていたのは直樹で、心臓がドクンッと跳ねる。

直樹は出会った時の優しいまなざしで私を見ていた。
「な、なに?」

緊張で声が上ずってしまう。
同じクラスになってもなかなか会話する機会がなくて、こうして並んで会話するのも久しぶりのことだった。

こんな奥手だから千佳も心配しているんだろうということはちゃんと自分でも理解している。
だけどなかなか踏み込んでいくことができないのだ。
「窓、閉めても良い?」

「え? う、うん」