と、シャーペンを重人の机に置いたけれど、重人はそれにも気がついていない様子でトロンとした目を黒板に向けているだけだ。

一瞬見えたノートは真っ白で、書き写しもされていない。
そこにいる重人はまるで別人のようでやっぱり不安がこみ上げてくる。

誰か重人の異変に気がついていないだろうかと周囲へ視線を巡らせたとき、私は愕然としてしまった。
右隣の子も左隣の子もそして後の子も、みんな重人と同じようにトロンとした目つきをしているのだ。

まるで集団で催眠にでも合っているみたい。
怖くなった私はすぐに自分の教科書に視線を戻して、もう周りを見るのをやめたのだった。