すぐに自分の席へ戻り、カバンから財布を取り出している。
「そんなのいいよ。自販機くらい自分で行くから」

椎名が立ち上がろうとするのを制してまで、春美が頑なに自分で行くと言い張っている。
「じゃあ一緒に行く」

「椎名はここで待ってて。なにが飲みたい?」
「お茶がいいけど……本当にいいの?」

「もちろん。まかせて!」
春美は胸を張ってそう言うと1人で教室を出ていってしまった。

その足取りはスキップするように軽い。

なんだか妙な気がして椎名へ視線を向けると「飲み物くらい自分で買いに行けるのに」と、申し訳なさそうな顔をしている。
やっぱり、椎名には悪気がないみたいだ。