なんだか今の千佳にはなにを言っても無意味な気がしてきてしまった。
頭がクラクラして自分の考え方もまとまらない。

椎名の席へ視線を向けてみると、普段はおとなしい井石春美や小野重人というメンバーの姿もあってびっくりした。

あのふたりは勉強熱心で、休憩時間にも教科書や参考書を開いているタイプだ。
分厚いメガネの奥の眼光がいつもするどく問題を見つめている。

それが、今は椎名と談笑してすごく柔らかな雰囲気になっている。
近寄りがたいふたりだっただけに、私は驚きを隠せなかった。

「あのふたり、椎名と会話するようになってから雰囲気が変わったんだよ」
千佳が私の心を読んだかのように言った。