その証拠のように、普段こういう時にあまり目立たな生徒たちでも手を挙げる子が出てきた。
椎名はひとりひとりから話を聞いて、それを黒板に書き出していく。

この時初めて彼女は文字も綺麗に書くのだと知った。
「今の所食べ物と展示が多いですね。先生、このクラスは演劇や演奏はしないんですか?」

半分ほどの時間をつかってみんなの意見を集めた後、椎名が先生にそう質問した。

自分の役目を完全に椎名にまかせていた先生は我に返ったように「体育館のステージの使用許可が降りればできなくはないかな」と、答える。

だけどその表情はあまり明るくない。
演劇部や吹奏楽部が優先してステージを使うから、一般の生徒たちが使える枠がとても少ないのだろう。

「なるほど。みんなはステージやりたいですか?」
椎名からの質問に手を上げたのは直樹だった。

私の心臓がドキリと跳ねる。