「あたしらもその話聞いたよぉ! 転校生すっごい美人だって!」
余裕の校則違反の茶髪をなびかせてしのぶが言う。

「どれだけ美人なのか職員室に見に行ったけど。結局見えなかったんだよなぁ」
と、英明。

英明はしのぶに負けず劣らずの茶髪をワックスで固めてツンツンに立てていて、耳には沢山のピアスをつけている。
どうやらふたりの方が少し情報が早かったみたいだ。

「どれだけ美人なのか楽しみだよな」
鼻の下を伸ばす英明の脇腹をしのぶがなぶる素振りをする。

ふたりは学校内でも有名なカップルだ。
派手なしのぶと派手な英明は、廊下を歩いているだけでもひと目を寄せ付ける。

「ふたりとも噂に踊らされてるだけだって」
私は呆れ顔でそう言ったのだけれど、そのときにはすでにふたりの世界に入ってしまっていて、私の声は届かなかったのだった。