家を出たのは昨日の夜なのに、もう何週間も何ヶ月も両親に合っていないような感覚になった。
それほど、教室での出来事は濃密だった。

「なんだか気分がよくなってきた」
深呼吸を繰り返していた直樹が呟く。

大きく目を開いて首を傾げているから、自分がどうしてこんなことをしているのかわからないでいるのかもしれない。

「直樹よく聞いて? 私達は椎名に洗脳されてたんだよ」
「洗脳?」

「そうだよ。椎名の香水とか、麦茶とか、そういうものになにか薬品が入ってたんだと思う。私達はそれを吸い込んだり飲んだりして、椎名の言いなりにされてたの」

それがどんな薬品がわからないけれど、警察に調べてもらえばすぐにわかるはずだ。
「今から警察に連絡する」