「直樹、こっちに来て」
手招きをすると直樹は戸惑った表情で近づいてきた。

直樹は私よりも近い距離でずっと香水の匂いを嗅いできたから、すぐには無理かもしれない。

だけどここで目を覚ましてもらわないと、私達は永遠に重罪を背負って生きていくことになるんだ。

「外の空気を吸って深呼吸して」
直樹に言いながら私はスマホを取り出した。

ずっと電源を切っていたスマホが久しぶりに目を覚ます。
数時間ぶりに電源が入ったスマホはすぐに何件かのメールを受信した。

すべて両親からのもので、やはり私が家にいないことに気がついて心配しているのがわかった。
それを見た瞬間、また泣いてしまいそうになった。