が、体を拘束されているから少し腰が動いただけだった。
「本当よ。ね、奈美ちゃんも嬉しいでしょう?」
「う、うん」

話を振られて頷いたものの、本当は悲しくて悔しくて仕方なくて、椎名のことなんてどうでも良くなっていた。

私は千佳を心配してここに来たはずだった。
それなのに、守ることができなかったんだ。
そんな気持ちが湧き上がってくる。

今の今まで忘れていた大切な気持ちを、千佳が亡くなったことでようやく思い出すことができたのだ。

途端に椎名への強い怒りが浮かんできた。
ここでしてきたことは絶対に許さない。
あの甘い香水に甘い麦茶。