「やだ、千佳ちゃん大丈夫?」
椎名が千佳の前に回り込んでその頬を何度がはつった。
すると千佳はくぐもった声をあげて目を開ける。

一瞬状況が把握できていないように目だけキョロキョロと動かしていたけれど、すぐに思い出したようでその顔には恐怖が浮かんだ。

「あぁ、よかった。もう死んじゃったのかと思った」
椎名が楽しげに声を上げて笑う。

「だけど千佳ちゃんは痛みに弱いみたいだね? これはやめておこうかな」
そう言うと椎名はペンチを机の上に戻した。

道具の入った袋をクルクルと巻いて、紐をむすぶ。
あそこにある道具はもう使うつもりがないのだろう。
それだけでホッとした。