椎名に声をかけられることよりも、爪を剥がされる恐怖心の方が強いのかもしれない。
「千佳、大丈夫だから落ち着いて。鼻でゆっくり呼吸をして」
私の助言に千佳が何度も頷いた。

それでも呼吸が乱れて汗が吹き出している。
千佳の可愛い顔が、今は見る陰もないくらいグチャグチャだ。

「千佳ちゃんの爪も綺麗だね。ネイルが似合いそう」
椎名が千佳の爪を一枚ずつ剥いでいく。
丁寧に丁寧に、爪以外の場所を傷つけないように。

千佳は一枚剥がされるたびにくぐもった悲鳴をあげた。
涙と汗が絶え間なく流れ落ちて、椅子の下にシミを作っていく。

千佳の片手の爪が全部はがされたとき、千佳が上を向いたまま白目になっていた。
「椎名、千佳の様子が変!」
さっきまでのうめき声も止まり、呼吸しているのかどうかも怪しい。