私は耐えた。
耐えて、耐えて、耐えて、もうダメかと思ったとき、ようやくすべての爪が私から剥がれ落ちていた。

「ほら、奈美ちゃんの爪とっても綺麗だね」
透明な袋に入れえられた10枚の爪を見せてくる。

それはついさっきまで自分の体の一部だったもので、触れればまだ温もりを感じそうな気がした。

だけどそれに触れることはできないまま、袋は直樹の爪の横に置かれた。
椎名に口の中のハンカチを取ってもらい、大きく呼吸を繰り返した。

酸欠になりかけていた脳に酸素が回り始めて、意識が覚醒していく感覚があった。
「最後は千佳ちゃんね。もう吐かないでね?」
椎名がそう言ったあと、千佳の口に紺色のハンカチを詰めた。

千佳の体はまだなにもされていない間から小刻みに震えていて、何度もえずいていた。