椎名に言われて冷静に見てみると、確かに重人の胸が上下に動いているのがわかった。
でも今がチャンスだ。
相手が無防備になっている間に殺してしまわないといけない。

「千佳、頑張れ!」
また声を張り上げて応援した。
自分でも気が付かない間に涙が頬を流れていたようで、その冷たさに驚いた。

どうして私は泣いているんだろう?
辛いことなんて、なにもないはずなのに。
この友達オーディションは名誉あることなのに。

千佳は体制を立て直すと椅子からモップに切り替えた。
さっき床掃除に使ったもので、先端のモップ部分は取り外されている。
柄だけになったそれを重人の腹部へ突き入れた。

気絶したままの重人が「ぐふっ」と声を漏らして口から胃液を吐き出す。
千佳は構わず重人の腹部を攻撃し続けた。