ようやく興味を惹かれる展開になってきたようで一安心だ。
「私は負けない。絶対に負けないんだからぁ!」

いつもの間延びする喋り方で叫びながら何度も何度も同じ場所を踏みつけにする。
重人は自分の身を守るためにうつ伏せになり、丸まってしまった。
その姿はダンゴムシみたいだ。

背中しか攻撃できる箇所がなくなれば威力は弱くなってしまう。

千佳の力で重人を殺すなんて到底できそうにない。
重人が体制を立て直すことができれば、きっと千佳は負けてしまうだろう。

千佳が死ぬ。
そう思った瞬間体の奥から寒気を感じて戸惑った。
私はどうしてこんなに怖くなっているんだろう。

別に、怖いことなんてなにもないはずなのに。
「頑張れ千佳! 頑張れ!」
気がつけば私は声を上げて千佳を応援していた。