だけど、どれだけ床掃除をしても血の匂いだけは充満したままだった。

あれだけ血が流れていたのだし、今でも英明の体からジワジワと出血しているから仕方のないことだけれど。
窓を開けるという選択肢は私達にはなかった。

だって、窓を開けることは椎名が嫌がることだから。
どうしてそんなに嫌なのか聞いてみたいけれど、それは無事に私が椎名の友達になれてからでも遅くはない。

このオーディションに負ける気なんてないんだから。
「さて、全員そろった?」
教卓の前に立つ椎名が教室内を見回して言った。

残っているのは私、千佳、直樹、重人、春美の5人だ。
どんどん人数が減ってきているけれど、ようやくここまで来たという感覚だった。

オーディションも早く進めていかないと夜が開けてしまう。
死体の処理なども考えるとぼーっとしている時間はない。