スーパーへ買いに走ることはできても、1人でお店に立っていた私がここを離れるわけにはいかない。

こんなときに限ってスマホを教室に忘れてしまって誰にも連絡が取れず、次の交代が来るまでどうしようもないと諦めかけていたとき。

「たこ焼きちょうだい」
よく日焼けした笑顔がそこに立っていた。
「あ、えっと……今ソースが切れてて、それで……」

しどろもどろになりながら販売できないことを伝えたのだけれど、その男子生徒は「ソースなしでいいよ」と言ったのだ。
ソースのかかっていないたこ焼きなんて美味しいだろうか?

そう思いながらも本人がいいというのだからと、私は鉄板の上でよく焼けていたたこ焼きを容器にうつして、販売した。
するとその男子生徒はその場でたこ焼きをひとつ口に入れ「うまい!!」と、大きな声で言ったのだ。